こんにちは、薬剤師の中村です。
さて、今日こられたお客様。
70代の男性の方ですが、今年の2月に肌のかゆみをなんとかして欲しいということでお越しになられました。
お腹はゆるい方で、皮膚は乾燥気味。
「とにかくかゆみを早くなんとかして欲しい。一種類の漢方で。」
というご希望でしたので、まずはスベリヒユのお茶を試していただきました。
2週間後、「あまり分からないけど、何か少しはいいようだ。それにこれはお腹の調子もよくするのか?」と言われたので、スベリヒユには下痢に対する良い効果もあることをお話するともう10日分ということでご購入されました。
でも10日後、「もっと強くかゆみに効くものが欲しい」と言われました。
痒みを改善するお薬は、体の熱を冷ますものが含まれているので、お腹に良くないことになるから、できればお腹を強くする薬と合わせた方がいいのですが・・・と伝えると、
「お腹のことより、痒みをなんとかしたい。だから一つでいい」
と言われましたので、熱毒をさます働きのある漢方のお茶をお勧めしました。
「少しはいいような・・・。もっと効くのはないかな」とも言われましたが、とりあえず続けていただきました。
ご本人も、何も言わず、ご購入されるようになりました。
3か月たって、痒みが良くなったと言われました。
でも、今度は「下痢してたまらない。1日2~3回ある。これを何とかしてほしい」
と言われました。
私は、痒みが治まってよかった。
根本的な脾胃の改善をしていただけることになってよかったと思いました。
年齢もあり、慢性的なこともあり、力がでない、顔色などから、参苓白朮散を飲んで頂きました。
2か月ほど飲んで頂きましたが、なかなかご本人の納得いくような結果が出ない様子。
少しはいいけど、また悪い・・・といった感じです。
ああ、この方の場合は「湿」がたまっているわけではない。
でも、胃腸の水分代謝が悪く、それが下痢となって現れていて、舌も暗い赤でやや青っぽく、大きめであるから、水もあるけど体の潤いが不足していて、それが痒みとなったとも考えられるわけだし・・・と参苓白朮散も悪くないと思ったのですが、他のものを・・・と言われるので、処方を変更してみました。
薬局仲間で大学の同僚のご意見も参考にし、脾胃を立て直す王道とも言える補中益気湯を飲んでいただくことにしました。
10日分ずつ購入していただいていたので、その都度お見えになったときに
「ん~、少しはいいかな」
「まだちょっと下痢するときはあるね」
など、言っていただきましたが、私も「これはとにかく続けてください」とお願いし、3か月たった今日は「下痢は治ったよ」と言ってくださいました。
嬉しかったです(^^)/
だんだんと顔色もよくなっていて、「下痢をなんとかしてほしい」と言われたときのお顔とはツヤが違う感じです。
食は細めでいらっしゃるので、肌を潤す力が弱いこともあり、乾燥の季節に入ったころから肌のかゆみが少しでてきています。
今は当帰飲子で肌への潤いと痒みのケアをしています。
もちろん、クリームでスキンケアも。
下痢に対する西洋医学的治療は
〇腸の蠕動を抑える腸運動抑制薬
〇下痢や便秘の際に腸管内で働く収斂薬
〇吸着薬(細菌性下痢などに対し、細菌性の毒素を吸着し、腸管を保護する)
〇殺菌薬(病原性細菌による感染の疑いの場合)
〇乳酸菌(整腸)製剤
〇過敏性腸症候群治療薬(腸管運動抑制薬や便の水分バランスをコントロールする)
などがあります。
直接腸の働きをコントロールするというイメージですね。
しかし、慢性的な下痢の場合は、一時的に下痢を改善できても、またすぐ再発します。
胃腸をしっかり元気にしないと、根本解決にはならないのです。
そこで、漢方薬。
気(エネルギー)を益す、気のめぐりをよくする、温める力を上に持っていく、血(栄養)を補う、温めるなどの働きの生薬が胃腸をしっかり立て直すための働きをしてくれます。
この前ご来店されたのが一か月前でした。
その時に10日分購入されたから、一日に飲まれる回数が減ったり、飲んでいない日もあったようですね。
それでも、「下痢は治ったよ」とのこと。
本当に嬉しく思いました。
でもこれから寒くなりますから、温かくて滋養のあるものを召し上がって、より強い体になりますように、心より応援しています。